super "my co" の大冒険 vol.28


黒幕の事務所はCityの中心部にあった。高層ビルの25階、ガラス張りの空間だ。そこからロンドンが一望にできる。ずっと遠くに見える丘は高級住宅地のハムステッドだろう。私達がかつて好んでよくお茶をしたり、バールームバーという教会の裏のバーがあり、日曜の午後を過ごした地域だ。10分くらい待っていたら黒幕が入ってきた。少し緊張したけれど、かなり場慣れをしたようで、口の中がカラカラになったり、どぎまぎしたりしなくなった。それに、日経新聞の取材に応じたりで、論理立てて、自分のやりたいことを英語で説明できるようになった気もする。私は、黒幕とのパワーランチの後起こった事件や、英国ならではのプロダクトを探す奮闘ぶりを、ひとつひとつゆっくりと黒幕に説明した。ここが決め手とばかり、日経新聞の記事の翻訳と、6月に開催する宇宙舞妓の個展のアイデアも披露した。

黒幕は、「フムフム」と聴いていた。私の話が終わった後、たばこを吸いながら、窓の外をみつめていた。沈黙が2分くらい続いた。黒幕は重い口を開いた。

「容子さん、あなたは、アーティストになりたいのですか、それともビジネスをやりたいのですか。確かに、アート系のビジネスという形態はあります。しかし、本来、アートとビジネスは異質なものです。この点を最初に明確にしましょう」。

一瞬迷った。ロンドンにきたときは間違いなく空間デザイン・アーティストだった。でも、ビジネスの世界に触れたら、こっちの方も面白そうで仕方ない。どちらかひとつという選択は私にはない。だって、今まで頑張って、泣きながら徹夜で作品作りをしたり、夢を追い掛けてきた。また、才能があっても、ビジネスが判らない芸術家の卵を応援するというのも向いているかも知れない。アートを知りうる人にしか出来ない仕事をしたいという、強い意志があるのだから。私は答えた。



back to the top
back
next