MIWAとYOKOはパワー全快。お互いのフラットを行き来しながら、将来の夢を語り合う。MIWAはフィルム・画像、私はインテリア。
「二人で力を併せたらすごくビックなコンビよね」とドンドン意気投合してしまい、実績も実力もない、修行中の身なのに、成功した後
のプリティーウーマントークで、夜中まで大はしゃぎ。まるで修学旅行の夜みたい。はしゃぎ過ぎて、時々学校を遅刻した。私達、二
日酔いのおっさん状態。
予定通りのロンドン生活エンジョイ。それに気候は最高。春から初夏にかけてのロンドンは本当に美しい。ウインブルドンが開催さ
れるのも6月末。その時期、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」の世界が現実になる。日没は夜10時半くらい。妖精パックが「惚れ薬」
を持って、私達の周りを飛び回っている感じ。「あち!ち!」のリッキー・マーティンを聴きながら「行くぜー」と、週末はクラブに出没
し、暴れた。9時まで空は青い。暑い夏だった。
当たり前だけれど、夏が来ると秋が来る。あっという間に半年が過ぎ、ロンドンは晩秋に包まれていた。私のお財布にも秋が来た。
両親はかなりの援助をしてくれているが、ロンドンは世界で一番物価の高い街になったし、一度社会人を経験しているのでなんとか
自分でしたかった。最初は、PRETのサンドウィッチをテイクアウェイしていたのに、食生活のレベルダウンを避けられず、センズベリ
ーのドーナッツをランチにするようになっている。でも、毎日ドーナッツばかり食べているわけにはいかない。アルバイトでもいいから
働かねば。
日本人女性の留学アルバイト先を見つけるのは案外簡単。ただ、英国労働法の基準があるので週20時間しか働けない。最初のス
テップは日系の人材派遣会社に登録すること。私は、Cという名の人材派遣会社に履歴書を登録し、グリーンパーク近くに事務所を
持つ日系大手企業のロンドン事務所で採用された。私にはいくつかの特技がある。朝早くから働くことが余り苦手ではないのだ。私
が採用された日系企業は、朝、東京からかかってくる電話の応対を探していた。全ての東京のお客様・本社の人達が流暢な日本語
を話せるわけではない。でも、東京・ロンドンの冬季の時差は9時間もある。だから、出勤時間は朝7時半だ。この条件だけで、夜遊
びは必須コースの日本人の女の子は尻込みする。でも、私はどんなに遅くまで踊っていても、朝は豹の如く目覚める。この才能が評
価され、晴れて、アルバイト先が決まった。
しばらく、日系企業で働くと、私の銀行口座も豊かになり始めた。センズベリーのドーナッツは病み付きになったようで、食べつづけ
たけれど、メイフェアのお洒落なカフェでランチをしたり、サンドウィッチをテイクアウェイしてバークレースクエアでランチしたりとOLラ
イフ満喫。日系企業の事務所から私の学校の間に「ヘンリーズ」というパブがある。食事も出来るので、1日中賑わっている。ヘンリ
ーズのウィンドーから、ピカデリーストリートを挟んで、グリーンパークがある。一年中、緑豊かな公園だ。窓の外の左の方を見ると映
画「ノッテンヒル」の舞台になった、リッツホテルが見える。
アルバイトが終え、学校に向かう途中、時々ヘンリーズに立ち寄ってアールグレーティーを飲みながら、日々のスケジュールを確認
した。ある日、私の横で、投資銀行マン風の若い男がファイナンシャル・タイムズを広げながら、コーヒーを飲んでいる。その男は、新
聞の内容に熱中し、私のことに気づかなかった様子で、新聞がドンドン私の陣地を占領し、アールグレーにファイナンシャル・タイム
ズの端がひらひらと舞い込んだ。
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